前編:うつ病かも?原因や診断について。電気けいれん療法を行った具体例を挙げて。

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うつ病について

はじめに

本日はうつ病についての記事を書きたいと思います。

 

僕もロサンゼルスに来てしばらくは、言語が通じないことや文化の違いに気分が滅入ったこともありました。

幸いうつ病にまでは至りませんでしたが、日本でも近年ますます増えてきている病気であり、友人や知り合いがなった方も多くいるのではないでしょうか?

 

うつ病はしっかりと治療すれば治る病気です。

 

本日は電気けいれん療法で治療した患者さんを具体例に挙げた記事にしたいと思います。

 

具体例

60代の女性Aさん、これまでに精神科の通院歴はありません。

 

子供が1人遠方に住んでおり、夫とふたり暮らしをしていました。

 

主婦として過ごし、週に1、2回近隣の卓球教室で友人と卓球を楽しむのが趣味でした。

 

ある日夫が心臓の病で突然亡くなってしまいます。

 

長年連れ添ったパートナーの死は想像以上に辛く、眠れず気分もさえない日が続きました。

食欲や体重も落ち、無理をして卓球教室には通っていましたが、友人から顔色の悪さや体重が落ちたことを心配されていました。

 

真面目なAさんは友人を心配させないように気丈に振舞っていました。

 

しかし、徐々に身の回りのことが手につかなくなっていき、卓球教室にも顔を出さなくなりました。

 

3ヶ月ほどそのような状態が続きます。

 

子供も心配してAさんの様子を頻繁に見にいっていました。

食事はますます取れなくなり、病院に行くことを子供に勧められても拒否が強く医療に繋がりません。

 

ある日やせ細ったAさんは「死にたい」と口にするようになり、子供はAさんを無理矢理にでも病院に行くことを決意しました。

 

そして、当時大学病院に勤めていた私のところを受診されました。

 

Aさんの受診時、

Aさんの表情はみるからにさえず、やせ細っていました。

僕がAさんに問いかけても返答が遅く思考がうまくいかない様子でした。

重い口を開き、夫の仕事、気分が落ち込み、何をする気も起きないと話していました。

死んでしまいたい気持ちについて尋ねると、小さな声で「死んでしまいたい」と口にされました。

入院して治療することの必要性を説明するも、入院については頑なに拒否していました。

 

そのため、僕は子供の同意を得て、うつ病の診断で医療保護入院してもらうこととしました。

 

医療保護入院とは、精神科医療が必要だが、本人が拒否する場合に、精神保健指定医という資格を持った医師の診察と、家族の同意がある場合に本人を入院させることができる入院形態です。

 

入院形態について詳しくはこちら

taromental.com

 

本当は本人の意思で入院して欲しかったのですが、命の危険性があると考えそうしました。

 

さてAさんは入院後どのようになったのでしょう。

 

 

うつ病とは

抑うつ気分、抑うつ状態、うつ病について

世の中にはうつ病、うつ状態、抑うつ状態、抑うつ気分など様々な用語が使われていて、紛らわしいように感じます。

 

気分が落ち込み、滅入るといった症状のことを抑うつ気分といいます。

 

抑うつ気分が強い状態のことを、抑うつ状態あるいはうつ状態と表現します。

 

抑うつ状態やうつ状態がある程度以上重症な状態を、うつ病と言います。

 

うつ病の分類、原因

原因から身体因性、内因性、心因性に分類することができます。

 

身体因性:

アルツハイマー型認知症のような脳の病気、甲状腺機能低下症のような体の病気、副腎皮質ステロイドなどの薬剤がうつ状態の原因となっている場合をいいます。

 

内因性:

いわゆる典型的なうつ病のことです。

セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質の調節がうまくいかないことから起きると言われています。

 

治療しなくても一定期間で良くなるとも言われますが、本人の苦痛を考えると早く治療した方がいいのは間違いありません。

 

心因性:

性格や環境がうつ状態に強く関係している場合です。

 

抑うつ神経症(神経症性抑うつ)と呼ばれることもあり、環境の影響が強い場合は反応性うつ病という言葉もあります。

 

Aさんに関しては、入院後、採血やレントゲン、心電図、頭部のMRIといった検査を行うも脳内や体に明らかな病気はありませんでした。

 

夫の死という環境ストレスはありましたが、あくまできっかけであり、子供いわくもともとの性格も抑うつ的な性格ではなかったと言いました。

 

典型的な内因性のうつ病であると僕は考えました。

 

うつ病の診断

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うつ病の診断基準

米国精神医学会出版の診断基準DSM-5によると、下記がうつ病の診断基準になります

A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。

  1. その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
  2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)。
  3. 食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヵ月で体重の5%以上の変化)。またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。 
  4. ほとんど毎日の不眠または過眠。
  5. ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
  6. ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退。
  7. ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)。
  8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による、または他者によって観察される)。
  9. 死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりした計画。

B. その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C. そのエピソードは物質の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

D. 抑うつエピソードは統合失調感情障害、統合失調症、統合失調様障害、妄想性障害、または他の特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群によってはうまく説明されない。

E. 躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。

 

ちょっとわかりずらいので、診断基準を要約すると下記のようになります

Aの1-9の症状のうち5つが見られ、そのうち1つは1か2であるということ。

1.気分の落ち込みのこと

2.興味や喜びの喪失というのは、意欲の低下のことです。例えばこれまで好きだったテレビを見る気も起きない、興味や喜びがわかないといったようなニュアンス

3.体重変化のこと

4.眠れないことや寝すぎてしまうこと

5.精神運動焦燥というのは気持ちが焦ってしまい、ソワソワしてしまうようなこと、制止というのは決断が鈍ったり、動作が緩慢になったりというニュアンス

6.疲れやすいこと

7.自分が悪いからと過剰に自分を責めてしまうこと

8.思考や集中が鈍ること

9.死んでしまいたいと考えること

B.日常生活に支障が出ていること

C.アルコールや薬品、他の病気が原因でないこと

D.E.他の精神疾患でないこと、躁うつ病も抑うつ状態を起こす

 

 

具体例のAさんに関しても、気分の落ち込みがあり、卓球教室に行けなくなるなど興味喜びの喪失がありました。

体重変化や不眠、思考も鈍り、死んでしまいたいという気持ちも同時に出ていました。

 

明らかに生活は成り立たなくなってきており、他の体の病気や精神的な病気でもありませんでした。

 

期間的にもうつ病の診断基準を満たします。

 

僕はAさんにうつ病であることを伝え、入院してもらいました。

 

入院後、Aさんは電気けいれん療法という治療を行うこととなります。

 

後編でうつ病の一般的な症状や治療法と合わせて書きたいと思います。

 

後編はこちら

taromental.com

 

 

参考文献:

DSM-5

うつ病|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省