パニック障害の治療、薬と暴露療法で発作は減っていきます

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パニック障害について

パニック障害とは

本日はパニック障害についての記事を書きたいと思います。

 

最近テレビでもたまに耳にしますよね。

 

芸能人の方がパニック障害になって、しばらくテレビを休んでいたなど昔よりも身近になったように感じます。

 

近年パニック障害は増えてきており、アメリカのNCS調査(National Comorbidity Survey, 1990-92年、2001-2年に再調査)では、4.7%ほどの有病率があると言われています。

 

20人いたら1人はなる可能性があるということになり、メディアでも身近になってきたのが理解できる多さですね。

 

パニック障害は女性が男性の2.5倍多く、18歳から60歳までの全ての年齢層でなりやすさは変わらず、60歳以降は発症が少なくなると言われています。

 

パニック障害の原因

原因はまだ解明されていません。

 

脳内の神経伝達回路のか活動という仮説に加えて、心理社会的ストレスが組み合わさって発症すると言われているのが、現在のところ有力です。

 

パニック障害の具体例を挙げて

具体例を挙げて書いてみますね。

 

ある日、私の外来に1人の女性が来院されました。

患者さんは23歳の女性で、これまでに精神科の受診歴はありません。

 

22歳の時から派遣会社で半年ほど働いていました。

 

もともと地方の出身の方で、大学を卒業して上京されました。

上京し、会社に行くことになりましたが、これまでに経験したことのない満員電車に乗ることになります。

 

通勤時間は1時間、毎朝満員電車です。地元ではこんな混んでいる電車を経験したことはなく、激しいストレスを感じます。

 

満員電車のストレスって自分でも思う以上にきついんですよね・・・。

 

頑張って半年ほど会社には行っていましたが、もちろんストレスは大きかったです。

 

ある日出社しようと駅に向かい、いつもの満員電車に乗ります。

 

満員電車の中で、突然に強い心臓のドキドキが出て、汗が止まりません。

 

喉が詰まってしまうような感覚に襲われ、息苦しくなり過呼吸に襲われました。

 

気が狂ってしまうのではないか、死んでしまうのではないかという恐怖感にも襲われたと言います。

その場にうずくまってしまい、周囲の助けで電車から駅のホームにおります。

 

発作は5分ほど続き自然に収まりましたが、その日はもう満員電車に乗る気力はなく会社を休ませてもらうことになります。

 

いわゆるパニック発作ですね。これまでにこんな経験はなかったということです。

 

ただ、初めてのことだったので、特別病院にも行かずに様子を見ていました。

 

しばらくは発作はなかったのですが、また発作が起きるのではという不安感が強く会社に行くのもしんどくなっていきます。

 

1ヶ月ほどは頑張って会社にも行くようにしていましたが、電車に乗る前に自宅で身支度をしているうちから発作を繰り返すようになります。

 

電車に乗ることができなくなり、会社を休むことも増えました。

 

会社に発作の恐怖で行けなくなり、私の外来を受診されます。

 

パニック障害の診断基準

米国精神医学会出版の診断基準DSM-5によると

 

A.繰り返される予期しないパニック発作。

パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が起こる。

注:突然の高まりは、平穏状態、または不安状態から起こりうる。

  1. 動機、心悸亢進、または心拍数の増加
  2. 発汗
  3. 身震いまたは振え
  4. 息切れ感または息苦しさ
  5. 窒息感
  6. 胸痛または胸部の不快感
  7. 嘔気または腹部の不快感
  8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  9. 寒気または熱感
  10. 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  11. 現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
  12. 抑制力を失うまたは“どうかなってしまう”ことに対する恐怖
  13. 死ぬことに対する恐怖

注:文化特有の症状(例:耳鳴り、首の痛み、頭痛、抑制を失っての叫びまたは号泣)がみられることもある。この症状は、必要な4つ異常の1つと数えるべきではない。

B.発作のうちの少なくとも1つは、以下に述べる1つまたは両者が1ヵ月(またはそれ以上)続いている。

  1. さらなるパニック発作またはその結果について持続的な懸念または心配(例:抑制力を失う、心臓発作が起こる、“どうかなってしまう”)。
  2. 発作に関連した行動の意味のある不適応的変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)。

C.その障害は、物質の生理学的作用(例:乱用薬物、医薬品)、または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症、心肺疾患)によるものではない。

D.その障害は、他の精神疾患によってうまく説明されない(例:パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように、恐怖する社交的状況に反応して生じたものではない:限局性恐怖症のように、限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではない:強迫症のように、強迫観念に反応して生じたものではない:心的外傷後ストレス障害のように、外傷的出来事を想起するものに反応して生じたものではない:または、分離不安症のように、愛着対象からの分離に反応して生じたものではない)。

 

この患者さんの場合は、動悸、発汗、息苦しさ、窒息感、どうにかなってしまう恐怖、死ぬことに対する恐怖感があり、1ヶ月症状が続き電車にも乗ることができなくなりました。

また他の薬物や医薬品の乱用や病気もなかった方でした。

 

パニック障害の診断が綺麗に当てはまります。

 

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パニック障害の治療

薬剤治療

パニック発作を消失させることを目的に、薬物療法を行います。

SSRIという抗うつ薬を中心に処方します。

 

SSRIには即効性がなく、効き始めるのに1週間以上かかります。

そのため、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬も併用します。

 

ベンゾジアゼピン系は即効性があるので、発作が起きそうな時、起きてしまった時に頓服として飲んでもらうことも有効です。

ただ、持続性はないのであくまで中心となる薬剤は抗うつ薬です。

 

ベンゾジアゼピン系には依存性、耐性(長期で使っているとやめずらくなる、効きにくくなる)といった問題もあるため、あくまで短期の使用に留めます。

 

この患者さんにも同様の処方をしました。

 

しばらく会社を休むことになったのですが、薬物療法と並行して暴露療法も行いました。

 

暴露療法

パニック発作は不安の高まりから起きるものなんです。

 

体を不安に徐々に暴露させ、不安に対して強くなっていくことを暴露療法と言います。

薬物療法と並行するとはいえ、かなりきついと思います。

 

この患者さんは、

まずは駅の改札まで行ってみる

→改札をくぐってみる

→空いている時間帯に一駅電車に乗ってみる

→電車に乗る時間を伸ばしていく

と行ったように不安に対して徐々に暴露させていくことで、電車でもパニック発作を起こすことはなくなっていきました。

 

その後、会社には時短勤務から復帰し、出勤できるようになりました。

 

もちろん満員電車の苦痛は続いてるので、会社の近隣に引っ越しをしたということでした。

 

おわりに

以前よりも身近な存在になってきているパニック障害。

 

パニック障害では、50~65%に生涯のいつの時点かにうつ病が併存すると言われます。

他にも、全般性不安障害25%、社交恐怖15~30%、特定の恐怖症10~20%、強迫性障害8~10%の併存があるといわれています。

 

つまり、パニック障害を我慢していると、他の精神疾患も併発してしまうリスクがあります。

 

正しい治療を行えば発作は必ず減っていきますので、我慢せずに治療を検討してみましょう。

 

 

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参考文献:

DSM-5

パニック障害・不安障害|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省